I  wish・・・  
最終話 「涙と、喜びと・・・」


アドレーヌがサンタにささやく。

「君は・・・まだ、もらってないのかい?」

サンタはアドレーヌに振り向いた。

「・・・はい」

サンタはため息をついて言いました。

「そうかい・・・すまないね、実はもう無くなってしまったのだよ」

アドレーヌは泣きそうな感じにニコッと笑って言いました。

「いえ、いいんです」

サンタは言いました。

「そうだな・・・じゃぁ君には、この袋をあげよう」

アドレーヌは首をかしげて言いました。

「袋・・・?」

「そう。さっきまでプレゼントが入っていた袋だ」

アドレーヌはうつむいて言いました。

「からっぽの袋なんかもらっても・・・」

「何も入ってないように見えるだろ?

でも、からっぽのようでこの袋には何でも入っているんだ」

アドレーヌはサンタの方を向いて言いました。

「どういうこと・・・?」

サンタはコホンと言って言いました。

「この袋にはね、全ての人々の気持ちが入っているんだ」

「気持ち・・・」

サンタは、後ろを向いて言いました。

「そう・・・喜びも、愛も、祈りも、もちろんいい事だけじゃない」

「怒りも、憎しみも、友を失った悲しみも、帰る場所が無い子供たちの痛みも・・・

皆の希望と今を大切に想う気持ちが入っているんだ」

「今を大切に想う気持ち・・・」

サンタは前を向いて言いました。

「そう・・・幸せというのはね、手に入れるのは難しいものなんだよ」

「よく、わからないよ・・・」

「誰でも幸せを探してるってことさ」

アドレーヌはニコッと笑って言いました。

「そっか・・・」

サンタはアドレーヌに袋を渡しながら言いました。

「そして君にはこの袋を使って出来ることをして欲しいんだ」

「ぅ・・・うん」

サンタは空を見ながら言いました。

「さて、それじゃぁ私はそろそろ帰ることにするよ」

アドレーヌは涙をポロポロ流しながら言いました。

「サンタさん、ありがとう・・・」

―――――私に、出来ること・・・―――――