僕らの世界〜OUR WORLD〜
第二章 手紙


ネスは朝日の光で目を覚ました。

「ん・・・?ふあ〜ぁ・・・あのまま寝ちゃったんだ。ママ、心配してるだろうな。」

ネスは家に向かって走り出す。途中、ネスは草むらの中に光る物を見た。ネスは気になって拾った。

それは炎の印がしてある掌に乗るぐらいの小さな玉だった。中で何かが蠢いている。

「何だろう?まぁいいや。」

ネスはそれをポケットに詰め込むと家の中に入った。母はネスを見ると微笑んだ。

「またあそこで寝ちゃったの?」

「うん・・・なんか、あそこにいると落ち着くんだ。」

ネスはトレーシーを見る。トレーシーはネスを見るとにっこりと微笑んだ。

「おはよう、お兄ちゃん。」

「おはようトレーシー。」

ネスもトレーシーににっこりと微笑んだ。トレーシーはネスの手に何かを落とした。ネスは首をかしげて手の中にある物を見た。

「トレーシー?これは?」

「お兄ちゃんにプレゼント!大切にしてね!」

トレーシーは母を見る。母と一緒に作ったネスへのプレゼント。ネスはそれを察してうなずいた。

「ありがとう、トレーシー。」

ネスはトレーシーが作ったペンダントを首にかけた。母はネスを見て微笑むと机の上を指差した。

「手紙が来てたわよ。誰からかしら?」

「僕に手紙?一体誰だろう?」

ネスは机に手を伸ばして手紙を取る。それは差出人も書かれていない奇妙な手紙だった。

ただそこに、古代文字みたいな直筆で『ネス』と書かれているだけだった。ネスはとにかく手紙を読むことにした。

『古代より創られしエレメを持つ者よ。今こそ4人のエレメを持つ者達を探し封印された神々を解き放て。

さすれば天は闇に包まれ地は破滅に向かうであろう。』 手紙にはそれしか書かれていなかった。ネスは首を傾げて考え込んだ。

エレメとは何か?4人とは一体誰の事なのか?

「ネスちゃん、誰からだったの?」

「!あ、クラスの友達からだよ!ママ、しばらくの間考えたい事があるから一人にしてくれる?」

ネスは母を見た。母は一瞬顔を曇らせたがわかったわ、とうなずいた。

「トレーシーもね。」

「うん・・・。」

ネスは部屋に入ってドアを閉めた。手紙の意味が全くわからない。

エレメとは一体何の事だろう?自分はすでに持っているものなのか?

「そういえば・・・この石、なんで炎の印があるんだろう?」

ネスは石を取り出して机の上に置いた。玉の中では何かがしきりに蠢いている。

「・・・僕には関係ない事だ。それに、もう決めた。こんな事でまたママやトレーシーから離れるのは絶対にダメだって。

世界を見てみたいなんて、そんなバカな考えはやめよう。」

ネスは玉を引き出しの中に入れるとベッドに倒れこんだ。何故か疲れが襲ってくる。ネスはそのまま眠りについてしまった・・・。



ネスは真っ暗な場所に一人で立っていた。辺りは黒く塗り潰したように闇が続いている。

「ここは・・・?」

ネスの呟きは闇に吸い込まれていく。ネスは叫んだ、ここはどこなのか?どうして自分はここにいるのか?

「エレメを・・・エレメをこっちに渡して・・・」

とてもか細い声がネスの耳に入った。ネスははっとして振り返った。そこには一人の女性がいる。

俯いている為に顔は見えなかったが泣いているようだ。

「どうしたの?エレメって何?」

ネスは女性を傷つけないよう慎重に話しかける。女性はネスのポケットを指差す。

「え?あれ?」

ネスは自分のポケットの中にあの玉が入っていることに気がつく。取り出すと、玉は闇の中で静かに輝いている。

「エレメを・・・私に・・・。」

「これを・・・?はい・・・どう・・・っ!」

ネスは差し出した手を引っ込めた。女性が初めて顔を上げた。女性の顔がない。

口だけが異様に笑っている。ネスは背中に這い上がる物を感じた。

「さあ・・・早く・・・エレメを・・・。」

「エレメを渡すな!!」

背後から怒鳴る声がしてネスは振り返った。そこにはネスの知らない青年が立っている。

青年は女性に剣を向けると一気に切り裂いた。女性は叫び声を上げて消滅した。

「危なかったな。それ、お前のか?」

「え?あ、はい・・・道で拾って・・・」

「それはお前にとっても俺達にとっても大切な物だ。他人なんかに絶対渡すな。」

「はい・・・」

ネスはわけがわからなくなった。一体この人は誰なのか?どうしてこの玉を知っているのか?

「あ、あの・・・エレメって何ですか?僕、全くわからないんですけど・・・」

「エレメか?それは自分で確かめる事だ。俺は言えない。

ただ、お前を俺は待っている、それだけは覚えとけ。」

青年はとても厳しい口調で言った。ネスは首をかしげた。

「待ってるって・・・?」

ネスがそう言った時、青年は闇に溶けるかのようにすっと消えた。

「待ってよ!!エレメって一体何?!あなたは・・・っ!!」

ネスは走り出した、闇の中をどこまでも・・・・・・。





〜管理人の感想〜
一晩野宿しても、風邪をひかないとは。
ネスってかなり丈夫ですねぇ。
それはともかく、彼の元に送られた手紙と、謎の青年の言葉。
エレメの争奪戦があって、ネスもこれに加われということなんでしょうか。