幸せの条件
第11話〜合わさる想い


…ここは、どこ??

真っ暗で、静かで…

そうか。ここは宇宙か。

でも、どうして宇宙にいるんだろう?

あの時、ドゥーリルの眩しい光が辺りを包んで…

そう。気が付いたら僕は宇宙にいたんだ。

辺りは宝石を鏤めたような星が瞬いている。

その他には何も無い、誰も居ない…

あれ?向こうの方に誰かがいる。

あ、誰かが何かと戦っている。

あれは…あれは僕だ!!!

もう一人の僕が、ナイトメア・ウィザードと戦っている!

という事は…

きっとここは、過去の世界なんだ!

『僕』が夢を守るためにナイトメアと戦ったあの日、

きっと僕は今あの日にいるんだ。

でも、どうして?何のために?

混乱する僕をよそに、もう一人の『僕』がナイトメアに向かって大きな星弾を撃った。

けれどナイトメアは寸前でその弾を避けた。

外れた星弾が、光を撒き散らしながら何処かへ飛んでいくのが僕には見えた。

その瞬間、僕は星弾に向かって走りだしていた。

僕は分かってしまった。この弾だ。

この弾が当たっていれば、ナイトメアは呪いを唱える前に消えていた。

この弾が当たっていれば、デッキーの星は滅びなかった。

きっとこの星弾がデッキーの星に当たったんだ。

そしてデッキーの仲間を滅ぼしてしまったんだ。

この星弾さえナイトメアに当たれば、全てが上手くいくはずだった。

僕がこの日にいる理由。

それはあの外れた星弾を受け止め、ナイトメアに当てるため。

過去を変えるためだ。

これは予想と言うより、確信に近かった。

だから僕は走った。真っ直ぐ星弾に向かって。

僕はなんとか星弾の前に立ちふさがる事が出来た。

後はこれを弾き飛ばせば…!!

駄目だ。僕の力では勢いが強すぎて弾き飛ばせない。

それどころか、僕の方が星弾に飛ばされそうだった。

どうすれば…誰か…誰か手伝って…皆…

――オネガイ、ダレカボクニチカラヲカシテ――

「ば〜か。おめぇ、何でここにいるんだよ」

その時、僕のすぐ後ろで聞き覚えのある声がした。

僕は信じられない思いで振り返った。

デッキーだった。

デッキーが、僕を支えてくれていた。

ううん。デッキーだけじゃない。

リプリーも、レッカも、メタナイツも、デデデ大王も、メタナイトも、皆。

みんなみんな、僕を支えてくれている。

皆が僕に力を貸してくれている。

「真実に、気づいてんな。気づかんかったほうが、楽やったのに…

でも、いいで。本当は、お前には気づいて欲しかったから」

リプリーは笑って僕にそう言った。

「デッキーは、カービィが羨ましかったんよ。強くて、真っ直ぐで…

そんなアンタに、死んで欲しくなかったんやと思うよ?」

そう言ってレッカが、デッキーと僕を順番に見た。

僕と目が合ったデッキーは、何も言わず目を伏せた。

僕は三人に何か言おうとした。でも、上手く言葉が出なかった。

「リプリー、レッカ、デッキー…ごめんね。ありがとう。」

三人とも、小さく頷いた。暫くして、デッキーが口を開いた。

「でもおめぇ、良いのか?これがどういうことか分かってんのか?」

僕は笑顔で頷いた。そして星弾に力を込めた。

皆も、力を込めた。皆の力が一つになるのを背中で感じた。

その瞬間、星弾は弾け飛んで、ナイトメアの方へ飛んでいった。

ナイトメアに星弾が当たり、消滅するのが見えた。

やった!!!!

僕は笑顔で皆の方を振り返った。

同じ笑顔の皆の顔は透き通っていて、今にも消えそうになっていた。

そうか。僕等は帰るんだ。元の場所へ。元の世界へ。

暫くして、音も無く皆は消えていった。

後には、まだ完全には消えていない僕とデッキーが残った。

「デッキー、一つだけ聞いて良い?」

その時にはもう、デッキーの体も消えそうになっていた。

僕の体も同じように、消えかけていた。

「僕等は、友達だよね?」

デッキーは綺麗な両目で僕の目を見つめた。

そして笑顔になった。

「ば〜か。んなもん、当たり前だろ?」

そう言った瞬間、デッキーの体は消えてしまった。

「そうそう。その袋、返しにこいよ」

たった一言、言葉を残して…

そして同時に、僕の体も消え、意識も闇の底に沈んでしまった。



――これがどういうことか分かってんのか?――

分かってるよ。これがどういうことか。

外れた星弾を当て、ナイトメアを倒すという事は、

デッキーの星が滅びなかった事になる。

ポップスターにナイトメアの呪いはかけられなかった事になる。

ポップスターを、そして僕等をデッキー達が助けにくる必要が無くなる。

それはつまり、デッキー達に出会わなかったことになるって事。

今回の事全て無くなっちゃうって事。

全部全部無かった事になっちゃうって事。

これが終われば、デッキー達の事、たった一欠片も覚えていない。

もう一生、デッキー達には会えないかもしれない。

全部全部無かったことになっちゃう。

僕ね、本当はね、凄く寂しい。

けれど、寂しいけど、きっとこれで良いんだと思う。

僕は皆で幸せになりたいから。

もう、誰の涙も見たくないから。

だから、良いんだ。大丈夫だよ。

だって、僕等は友達だから…



最後の物語へ続く