幸せのカギを探そう
心の記憶(完結)


アドレーヌの家は貧乏だった。

いつも母が昼も夜も、必死に仕事をしていた。

そして父は・・・もういない。

原因不明の病状が出て、そのまま助からなかったとか。

その父の分、母が替わりに働かなければならないので、

毎日毎日、母は必死に手を動かしている。

アドレーヌは心配になって、「大丈夫なの?休んだら?」

と聞けば、母は「大丈夫!アドちゃんがお母さんに元気をくれるからね」

と言って、また仕事を始める。しかし、給料は少なかった。

これだけ働いても、ただりんご一個買えるか買えないかのお金だけなんて・・

アドレーヌはつらい現実を知った。

だが母は明るく言った。

「心配しなくていいよ!頑張ってたら、幸せはやってくるから」


突然だった。

母がいつものように机に向かって、手を動かしていた時だった。

バタンという激しい音とともに、母は机に倒れかかった。

「母さん?母さんっっ?!」

アドレーヌは呼びかけるが、返事は来ない。

でも、母は息をしていた。かなり弱々しくだったが・・・

今からでも遅くはない。病院はすぐそこなんだ。

お医者さまにこの事を知らせなきゃ・・・

アドレーヌは家を出た。

そして必死に走った。


病院は大体400メートル離れた所にあったから、すぐにたどりついた。

「やった・・・母さんが助かる・・・」

そう言いながらアドレーヌは急いで病院へ駆け込む。

しかし・・・


「何で?!どうして母さんを助けてくれないの?!」

思いもつかなかった答え。

「何でって・・・君の家は貧乏じゃないか。どうせ金もないんだろう」

そう言いながら、医者はアドレーヌを追い出そうとする。

「せめて・・・せめて薬だけでも・・・」

「うるさいっ!!金のない奴はお断りだ」

医者がアドレーヌをどなりつけ、病院から追い出し、入り口をふさいだ。

「誰かっ!!お金をかしてっ!お母さんが死んじゃうっ死んじゃう!!」

アドレーヌは、村の人達に必死に頼んだ。必死に・・・必死に・・・

「誰か・・・・・・」

村の人達の視線は冷たかった。アドレーヌの声を聞いても、

さっさとどこかへ消えてしまう。

そして人混みがだんだん消えてゆき、アドレーヌはただ一人、その場に立っていた。


母さんは父の後へとついていった。

もしあの時、お医者様が助けてくれれば・・

もし、村のみんながお金を貸してくれれば・・・

アドレーヌは泣いた。

泣いた。泣き叫んだ。ずっと・・・・

・・・どれぐらいたってからだろう。急に声が聞こえてきたのは・・


『憎いだろう』

え?

『村の者達が憎いのだろう』

憎い・・・憎い。

『そうだろうな。医者は役立たず、村を走り回って

救いの手を求めても、誰も助けてくれなかったろう?』

助けてくれなかった・・

『お前に力をやる。そして、この星から逃がしてやる』

・・・本当?

『そうさ。ポップスターという星へと送ってやる。そしてお前の力・・

絵を実体化させる能力をやる。我が名は・・ダークマター』

ポップスター・・実体化・・・・・・・ダークマター?


その言葉を聞いた時だった。アドレーヌの体が宙に浮いたのは。

「え?な、何・・・?」

そして、包まれていく光とともに、アドレーヌの体は消えていく。

しかし聞いてしまった・・・ダークマターの最後の一言・・・

『・・その星も、消してしまうがな』

「!!?」

そしてアドレーヌははるか遠く・・ポップスターへと飛ばされてしまった。


「アドちゃん・・どうしたの?!本当」

カービィがかなりあわてた表情を浮かべていた。

「カー・・・くん・・・」

「えっ・・カーくん?!アドレーヌ今、カーくんって・・・」

カービィはかなり驚いた様子だった。


そうだよ、カーくんって呼んだよ。

カーくん・・・私に希望をくれたんだよね。そうだ。

あいつに・・・ここへと飛ばされてしまったとき・・・

カーくんが私の名前を聞いてくれた。

初めてだった。名前を聞かれるなど・・・

そして、私が記憶をなくした時のように、カー君は

いろいろな所を紹介してくれたんだよね・・・

そして、他のみんなも・・・優しくしてくれた

乗り移られちゃって、カーくんと戦っちゃった時も、

許してくれたよね・・・

そして、めいいっぱい幸せをくれた。

私の心のドアを開けてくれた・・・

今、私が『全部思い出したよ』って言ったら、カーくんどんな顔するだろう。

フッと軽く微笑む。





幸せのカギ、私も誰かに渡したいな