ケルハーン戦記 〜英雄の伝説〜
第一章 第二話


《逃げろっ!『イファルナ』の奴らが襲ってきたぞぉ!!》

《ぎゃぁぁ!!》

《ひぃ!お、お助けを…》

《はははは!壊せ!!焼き払え!!ここの住人どもは、皆殺しだぁ!!!》

《お前は逃げろ!ここは、俺が何とかする!!》

《で、でも…兄ちゃん…》

《早く行け!!》

《……達者でな、カービィ…》


「……兄ちゃん!兄ちゃぁぁぁぁん!!」

カービィが眼を大きく見開きながら大声で叫んだ。

息は切れ、額からは汗が絶え間なく流れる。

「はぁはぁ…ゆ…夢?」

ようやく冷静になると、カービィは呼吸を整え辺りを見回した。

しばらくすると、自分が小さな薄暗い個室のベッドの上に居る事が分かった。

「ここは何処だ…何故ボクはここに?」

カービィがわけが分からないままベッドに座り込んでいると、

突然個室の扉がギィギィという音を立てながら開いた。

暗い場所に慣れていたせいか、

扉が開いた時に入ってきた外の光が異常に眩しく感じた。

しばらくの間眩しさで辺りが見えなかったが

次第に慣れてくると扉の所に二人の人影が見えた。

一つの人影は燃え上がる髪を靡かせ、

もう一つの人影は背丈が高く、長いはちまきを頭に付けていた。

カービィはすぐにその二つの人影の正体が分かった。

「ジョー!レオ!!」

そうカービィは言うと二人に近寄った。

二人もカービィを心配そうな眼で見ながら近寄った。

「カービィ!もう身体の方は平気なのか!?」

ジョーが心配気な様子でカービィに問いつめた。

「う、うん、ボクは平気だけど…」

カービィが何の変哲も無さそうな顔で答えると、

ジョーは張りつめた表情をゆるめ、穏やかな顔になった。

「…ねぇ、ここは何処なの?」

カービィが不意に二人に問いかけた。

「ん?ああ、ここはだな…」

「プププ共和国軍第12部隊前線基地さ。」

レオが話している途中に、誰か別の人物が入ってきてそう答えた。

声は渋く、黄金色に輝く鎧を装備した、

一人の見慣れない人物がそこにいた。

ジョーとレオは、その人物を見るなり、急に敬礼をとった。

「初めまして、カービィ君。気分はどうだね?」

その人物がカービィに話しかけてきた。

「あ、あの、どちら様ですか?」

現状を上手く理解できていないカービィは、その人物に問いかけた。

「そうか、自己紹介が遅れたね。」

彼はそう言うと、姿勢を良くしてこう言った。

「私の名前はサーキブル少佐。ここ第12部隊の指揮官だ。」

「しょ、しょ、少佐ぁ!?」

その言葉を聞くなりカービィは眼を大きく開けて驚いた。

「し、し、し、失礼しました!!」

慌ててベッドから降りようとしたら、

バランスを崩してしまいカービィが勢い良くベッドから転げ落ちた。

「オイオイ、そんなに慌てなくてもいいよ。」

サーキブルがカービィに向かって言った。

その言葉を聞いてもカービィは取り乱しながらその場に立って敬礼した。

「うむ…その様子だと、どうやら毒の方はかなり中和された様だね。」

サーキブルが言った。

「毒?一体何の話ですか?」

意味が良く分かっていないカービィが問い掛けた。

「カービィ、お前は『サボン』の毒にやられたんだよ。」

カービィの言葉を聞いたレオが答えた。

「『サボン』…?」

「ここらに生息する植物の名さ。」

サーキブルが答えた。

「全身にトゲの生えた小さな植物でね、

見た目こそは可愛いがとんでもない猛毒がトゲに含まれているんだ。」

サーキブルが更にこう続ける。

「おまけに刺された時にたいして痛みを感じなくてね。

知らない間にその毒を負って死んでしまうケースも少なくないんだ。」

その言葉を聞いて、カービィが青ざめた。

「キミは運が良かったよ。割とすぐに治療が受けられて。」

カービィは自分が生きている事に感動した。

「では、私はここで失礼するとしよう。色々と忙しいのでね。」

サーキブルはそう言うとカービィを背にして扉から出た。

と、そこで足を止め、身体を180度回して再びカービィを見て言った。

「キミはもう少しそこで安静にしているんだ。

まだ完全には毒は中和されていないはずだからね。」

そう言い終わるとまた足を進めた。

と、そこでサーキブルにカービィが声をかけた。

「あの…物資の輸送の失敗の事ですが…怒ってないんですか?」

カービィが不安そうに尋ねた。

その言葉を聞いてサーキブルは微笑した。

「…過ぎた事を責めたりしても、何も始まらないよ。」

そう言うとサーキブルはそのまま外に出ていった



〜管理人の感想〜
サーキブル少佐登場ですか。
何かこの物語のキーパーソンになっていきそうですね
夢に出てきた『カービィの兄』は今後のストーリーの伏線かなあ。