想う


『今オモウコト』


オレの名はソードナイト、メタナイト卿にツカエル戦士の一人だ。

メタナイト卿はかつて銀河戦士団の一員として魔獣と戦った凄い人だ!

それで、今その卿はといえば・・・

行方不明だ。

ブレイドに言ったら大げさだ。の一言で終わらせるだろうが。

でも今日は特別な日だ。

渋る卿を説き伏せて、稽古を付けてもらえることになったんだ。

卿は、戦争が終わってから戦いを極力避ける(誰かを守ろうとするときは別だが)

なぜかは知らないし、聞く気も無い。

だから、卿との稽古は貴重なんだ。

もう日が暮れる。仕方ない、ブレイドにでも聞いてみよう。



「ブレイド、卿見なかったか?」

「いいや、部屋に戻ってんじゃないのか?」

「思い当たるところは探したけど・・・」

―珍しいな、卿が一人でどこかへ行くなど―

卿についていくと決めた日から、私とソードはできるだけ卿のそばにいるようにしていた。

卿は強い人だ。自分の信念を貫き通し、そのために死ぬことを怖がらない。

だから・・・

そばにいないと怖くなる。

どこかへ、遠いどこかへたった一人で、気づかぬうちに言ってしまいそうで、

―怖い―

ソードと別れ、城のテラスに出て日の沈み始めたププビレッジを見下ろしてみる。

どこかにあの丸い影が見えないか・・・



私は、丘の上に立てた、かつての戦友たちの墓の前に来ていた。

墓といっても名ばかりのもので、彼らの骨はここには無い。

彼らはみな戦場で息絶え、そして戦場で朽ち果てる。

それはある意味戦うものの宿命であり、戦争中は当たり前のことだった。

しかし今思うと、かれらの、仲間たちの存在を示すものが何一つ無いのは悲しいことだ。

遺品も遺骨も無く、あと何年かすれば人々は戦争があったことすら忘れるだろう。

平和のために、名もなき戦士たちが命をかけて戦ったことも。

「私は、貴様らは何のために戦ったのだろうな・・・」

深い闇が心を支配する。

―ナゼ?ドウシテ?―

「「卿!!!」」

「!?」

強い声に現実に引き戻される。

「探しましたよ!!」

「どこいってたんですかあ!?」

「・・・ソード、ブレイド。」

「城に戻りますよ!すっかり暗くなっちゃいました」

「今日は稽古付けてくれるって言ってたのに!」

不満そうなソードに苦笑する。

「すまなかったな、稽古はまた今度の機会にしよう」

少しだけ、墓標に振り返り、戦友たちに話しかける。

「すべての人が忘れても」

―わたしはずっとおぼえているよ、きさまらといっしょにたたかったこと―

「いつまでも」

「「?卿、どうしたんですか?」」

不思議そうにしている二人に仮面の下でそっと微笑んだ

「いや、なんでもない。さあ帰ろう」

メタナイト卿は振り返らずに自分の場所へ歩き出した。


end