後始末請け負います
〜第二章〜


まだ空の暗い夜明け前、メタナイトはそこにいた。

手はだらりと下がっており、眼をつぶっているために瞑想しているようにも見えた。

だが、

彼はゆっくりと眼を開けた。

倒すべき、憎き相手の気配を感じ取ったからだ。

そして、

「ストップメタナイト!!ぼくだってば!!!」

「・・・そんな事分かっている」

間一髪で神速の斬撃をよけたカービィは冷や汗を流しながら主張した。

「・・・ごめんなさい、あやまります、だからゆるして」

メタナイトはしばらくじと目でカービィを眺めていたが、やがて剣を収めた。

「・・・この町で仕事を見つけるぞ、宿代を払えば一文無しだ」

「ええ!?ご飯は!?」

メタナイトは無言のまま剣に手をかけた

「ごめんなさい!!」

命の綱渡りを続けている(自分のせいだが)カービィはそろそろ限界が近かった。


空が、明るくなり始めた。




「仕事を探せといわれても・・・」

徹夜の逃亡劇の後、カービィは町を歩いていた。

「・・・何処を探せばいいの〜?」

ここは観光地、仕事なんかあるだろうか・・・


後始末代行屋(トラブルシューター)

小店舗の客とのいざこざから、犯罪まで。

依頼されればどんなものの後始末でも請け負う者たちのことである。


「っていえば聞こえがいいけど、実際はお金目当ての何でも屋だよね〜」

「一人でなにぶつぶつ言っている、気持ち悪い」

いつの間にやら後ろに現れたメタナイトにカービィはうんざりした視線を向けた。

「・・・気配消して人の背後に立たないでよ」

「素人でもあるまいし、何を言ってる」

カービィはますますうんざりした。

(ああ、何でこんなやつと一緒に旅をしてるの僕?)

涙を流しながらこぶしを握ると、次の瞬間涙を振り払った。

(ううん、僕負けない!この逆境に耐え抜いてみせるから!!)

「で?」

「へ?」

メタナイトの声で、カービィは一気に現実に引きもどされた。

「仕事は見つかったのか?」

「あ・えっと・まだ・・・」

「そうか」

メタナイトはため息をつくとかぶりをふった。

「・・・観光地での後始末は小さいものばかりと覚悟はしていたが、まさかゼロとは」

「メタナイトの方も収穫なしだったの?」

うなずき、またため息をついたメタナイトをみてカービィは問いかけた

「夜になったら酒場に行く?結構トラブルあるかもしれないでしょ?」

「・・・ああ」

あきらめて帰ろうとしたその時


どごぉぉぉぉぉぉぉぉん!!


轟音があたりを支配した。

「・・・行ってみる?仕事見つかるかもね」

「うまくいけばな、もしかしたらタダ働きになるやもしれん」

「うわっ、それ最悪」

軽口をたたきあいながら、二人は騒ぎの中心に向かって駆け出した。




あたりは廃墟と化していた。

崩れ落ちる家々

家をなくし、呆然とする人々

親とはぐれ、泣き叫ぶ子供たち

子を探し、半狂乱になっている母親

その中心に、それはいた。


サラマンダー


火を吐くトカゲの王たるものが。


「何でここにでっかいトカゲの火を吐くやつがいるの!?」

「サラマンダーと言え、サラマンダーと」

ここまで来て漫才を続ける二人にすがり付いてきた人影がいた。

「助けてくれ!あいつに子供をさらわれたんだ!!」

かなり身なりのいい服装をした男だ。

なるほど、言われてみればサラマンダーの口に布の塊のようなものがぶら下がっている。

彼の隣には、母親だろう女性が呆然と座り込んでいる。

「頼む!あんた剣士だろ!?そっちの方は魔導士だろ!?あいつを始末してくれ!!」

「・・・メタナイト」

カービィが服を引っ張ってきたのを無視してメタナイトは男に話しかけた。

「あれの飼い主は貴様か」

男はびくりと、震えるとうつむいた。

「なるほど、金持ちの考えそうな事だ。大方自慢でもしたくてわざわざつれてきたのだろう?それで暴れだしたら始末してくれ?馬鹿も休み休みいえ」

「わぁ、最悪」

カービィの嫌悪のこもった視線を受けて、男は身を縮めた。

「だが、私たちはトラブルシューターだ、契約を交わせば貴様は客だ」

「高くつくと思うけどね〜」

すると、それまで黙っていた母親らしき女性が立ち上がった。

「いくらかかってもいいです。どうかあの子を救ってください!!」

カービィたちは顔を見合わせた。

「契約成立?」

「だな」

「やっほ〜い!!暴れてくるね〜!」

そういうとカービィはサラマンダーの前に立ちふさがった。

「こら、そこのでっかいトカゲ!ご飯のためだ覚悟しろ!!」

サラマンダーは目の前の虫をかたずけるために火を噴いた。

カービィはその場を動かない

「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」

誰かの悲鳴が聞こえてきた。だが

「も〜らいっ」

炎はカービィの体に当たる前に、虹色の光に包まれ、消えた。

そして

「コピー!ファイヤー!!」

炎を包んだのと同じ虹色の光がカービィをつつんだ。

その光が消えたとき、カービィはカービィではなくなっていた。

桃色の髪は燃え滾る炎のいろに

瞳は太陽と同じ光を宿し

虚空から現れたサークレットを装着すると、カービィはサラマンダーに向き直った。

「さあ、反撃開始だよ」

手を突き出しそして、

けり倒された

「いったぁぁい!何すんのさメタナイト!!」

「貴様今何処を狙っていた」

「何処って・・・頭だよ」

「大馬鹿者、赤ん坊まで燃やす気か」

「・・・あ」

メタナイトは頭痛を振り払うような動作をした。

「・・・私が赤ん坊を取り戻す、貴様は私が赤ん坊を救出したのと同時に攻撃しろ」

「え?それだとメタナイトがあぶな・・・」

「誰に向かってものを言っている」

メタナイトはそういうと、サラマンダーめがけてかけていく。

「勝手なんだからもうっ!」

カービィは、その一瞬のために精神を集中させ始めた。


メタナイトは稲妻のように屋根から屋根を渡り、サラマンダーに向かって跳躍した。

空中で体勢を変え、剣を抜くそして、

彼は赤ん坊を救出していた。

あまりに正確かつ早い斬撃は、抜く瞬間も、収めたときも見せずに

サラマンダーに咥えられている布の部分だけを切断した。

「カービィ!!」

「分かってる!!」

そして

「火炎斬(フレイムセイバー)!!」

突き出された手から出た炎の剣は、サラマンダーを一撃で倒した。


「・・・ゴメンね」 カービィが再び光に包まれ、そしてそこにはいつものカービィがいた。

「でも、僕たちは生きたいんだ」

カービィは鎮痛な面持ちでサラマンダーを見た。

この事件の一番の被害者を、悲しみの目で。


この事件が、この町と、そしてカービィたちの運命を大きく変えることとなる。

「聖なる悪夢」の名の下に・・・



まだつづく





〜管理人の感想〜
う〜ん、契約してから敵を倒す。
何か、仮面ライダーインペラーみたいだなぁ。
それはともかく、サラマンダーを倒した後、カービィが謝るシーンはよかったです。
敵を倒してもカタルシスを得られない、というのは個人的に好きなんですよね。


あ、ハートマークはHTMLでは処理できないみたいなので、削除させていただきました。
まことに申し訳ありません。