幸せの条件
第10話〜真実の一滴


「ドゥーリルの犠牲は…友達の命や。」

その声が、洞窟に響き、やがて消えました。

「友達の……命だって…ッ?」

デデデ大王が言葉を吐き出します。

「そんなの…犠牲にできる訳無いだろう!?」

「どの道、ドゥーリルは砕けて無くなってしまった。

我々には、もう道は残されていないらしい。」

メタナイトが、皆を見回して、首を振りました。

カービィは黙ったまま、リプリーの消えた方向を見ていました。

「僕は…僕はどうすればいいの…?」

カービィの声で、皆はカービィの方を向きました。

「もう、僕等は何も出来ないの……?」

カービィは誰に聞かせるでもなく言葉を続けます。

「何が『星のカービィ』だ。結局僕は何も出来なかった。

大切な星や大切な人達、大切な友達すら守れないのに…」

皆はその言葉に、ただ俯くだけです。

「僕は何も守れていないじゃないかぁ…ッ。」

カービィはそこまで言って、俯きました。

頬を伝って涙が一滴、デッキーから貰った袋に落ちました。

袋は、その涙に反応して優しい光を灯しました。

カービィはその光景に驚き、袋を開けました。

「デッキー?………君は…ッ。」

袋の中から出てきた物は、小石ほどの大きさの…

小さな小さなドゥーリルの欠片でした。

――おめぇに貸しといてやる。いざという時に開けな――

カービィはこの瞬間、全てを知ったような気がしました。

皆がカービィとドゥーリルの欠片を見つめる中、

メタナイトがカービィに静かに問いかけます。

「……カービィ、お前は何を願う…?」

「ちょっと待つのサ!ドゥーリルは友達を犠牲にしないと使えないのサ!」

マルクが焦りを含めた声をメタナイトにかけます。

「もうしてるよ。」

カービィは辛そうに笑って言いました。

「犠牲はデッキーの命。デッキーがあの時死んだのはこの為だったんだ。」

…デッキーはドゥーリルをこの世から消し去りたかった。

そしてナイトメアの呪いから僕を助けたかったんだ。

デッキーは考えた。この二つを同時にやってしまおう。

自分がカービィに近づいて、裏切る。裏切り者の『演技』をする。

そして自分自身はドゥーリルの犠牲になる為死んで、

ドゥーリルの欠片をカービィが使えるようにする。

リプリーとレッカはドゥーリル本体までカービィ等を導き

片方を犠牲にして本体を砕き消え去る。

これで全部計算通りポップスターも救えるし、ドゥーリルも消滅する。

唯一の計算違いは、カービィ達が優しすぎた事、

真実にカービィが気が付く事だった。

優しくなければ裏切り者を生き帰させる事より星を救う方を選ぶ。

もし真実に気付かなかったら迷わずドゥーリルを使う。

けれどカービィ達は優しかったし、

リプリーの最後の一言でカービィは気付いてしまった…

「リプリーは真実に気付いて欲しかったのかもしれない。」

カービィは静かに言いました。

「自分の友達が死んだ本当の理由を。真実を。」

カービィはドゥーリルの欠片を強く握り締めました。


――全ての頂点に立てるのに…――


「富?財宝?権力?栄光?そんな誰も守れないものは要らない。」


――他人を犠牲にするから幸せは手に入るんやから。それが世の中の掟――


「『誰かを犠牲にしなきゃ成り立たない幸せ』なんて要らない。」


―――おめぇ等はさ、『自分が幸せになる』のと、

『自分の大切な人が幸せになる』のと…どっちを選ぶ?―――


「僕はただ、『皆で』幸せになりたいんだ…ッ!!!」

その瞬間、ドゥーリルの欠片が強く輝き洞窟を照らしました。

それに合わせカービィ達の意識も深い闇へと吸い込まれていきました。




続く



〜管理人の感想〜
いやあ、相変わらずわくわくさせてくれますね。『幸せの条件』。
フィナーレの予兆を感じる終わり方だったな。
デッキーがどういう理由でカービィに近づいたのかは、
個人的には、多様な理由があると思うけど。