幸せの条件
翌朝。
第5話〜沈黙の呪文
カービィ達は宿を出て、また村や町を周っていました。
以外とサクサクパイのごとく進み、あわせて六個の村、町をお昼ごろに周り終えました。
歩きながら、カービィが皆にふと尋ねます。
「これでいくつぐらいの町かなぁ?」
「町村合わせて現在八番目だ。」
カービィの問いに、さっとメタナイトが答えました。
「つまり3分の一を周ったことになるな。」
静かに、低い声でデッキーが皆に伝えます。
「お〜っ!まだ全然時間あるし、大丈夫そうだな。」
嬉しそうなデデデ大王の言葉に、すかさずマルクが口を挟みます。
「ま、とりあえず油断は禁物なのサね『オッサン』。」
マルクはニヤニヤ笑いながらデデデ大王を見ました。
「ムカッ…でもこのペースなら全部周るの朝飯前だぜ?」
とデデデ大王が楽観的に言うと、納得いかないのかカービィは顔をしかめました。
「うそつき!朝ご飯さっき食べたジャン!!!!!!」
…どうやらカービィは何か言葉の意味を勘違いをしているようです。
あ、ちなみに朝飯前とは楽勝だ,簡単だという意味ですよ。
「あ、でも明日の朝ご飯までに周れば朝飯前って事かぁ…」
根本的に間違ったその言葉に、デッキーは呆れたまなざしを送ります。
「…本格的に脳味噌腐ってるだろおめぇ。」
しかし、口の悪いデッキーが罵声を吐くのにも構わず、
「いや、毒ピクミ○みたいにキノコが生えているの!」
とキッパリ言い張るカービィ。リプリーが軽く首を傾げます。
(…毒ピク○ンって…何だ?)
しかしそのリプリーも無視してデッキーの言葉は続きます。
「確実に脳細胞死滅してるなおめぇ。」
「のーさいぼ〜って食べれる?」
決定的なカービィの気の抜けた一言に、デッキーもとうとう諦めたのでしょう。
「はぁ…コイツの頭ん中ご臨終だな。手遅れだぜ…」
とキツ〜ク一言、黙りこんでしまいました。
それをよそに、皆は八番目の町を周り終えました。
しかし残念な事にここにも、呪いをかけた者はいませんでした。
…町を出ると、見渡す限りの広々とした荒野に出ました。
「さて。次の町まで約四十分だな。」
デッキーは荒野を一瞥して呟きました。
「うわ〜ぁ広い荒野やな。な〜んにも無いで。」
リプリーが驚嘆の声をあげました。しかしレッカの言葉がそれを制しました。
「…いや、なんか何かがこっちに向かってるよ?」
遠くの方から、何かが猛スピードで近づいてきます。
それを目に止めたメタナイトが遠くを睨みつけます。
「あれは…幻獣だ!!」
なんと、向こうの方から、頭の二つついたライオンのような生き物が、
二、三十匹ほどこちらに向かって突進してきました。
「ちょっとヤバヤバな雰囲気なのサよ!」
マルクが慌てて周りを見回します。直にメタナイトが指示を出しました。
「危ない!皆で戦うぞ!!!」
メイスが、アックスが、ジャベリンが、トライデントが絶妙なチームプレイで、
デデデが大きなハンマーで、メタナイトが華麗な剣捌きで、
マルクが得意の魔術で、リプリーが破壊光線で、レッカが頭突きで、
そしてカービィが敵の攻撃を飲みこみコピー技で、
全ての敵をなぎ倒していきました。
敵は、今までの中で一番強いものに思われました。
しかしカービィ達は互いを信じ、一歩も退きませんでした。
そして…
「ヤッタ!全滅♪」
カービィの嬉しそうな声で、戦いが終わりを告げました。
「ふ〜。なんとか無事みたいだね。」
トライデントナイトが、息を切らしたリプリーとレッカに声をかけました。
それでやっと、レッカはほっとした表情になりました。
「恐かった〜。私生きてんのは皆のおかげやわ…」
先ほどの戦い。レッカもリプリーも身を守るぐらいの力を持っており、
敵は倒さなかったけれど、一応援護にはなりました。
「でもなぁ…さっきの戦いで、なんもしとらん奴がおるで。」
と不満そうなリプリーの言葉を聞き、皆は一斉にデッキーの方を見ました。
「…デッキー?」
アックスナイトがデッキーの顔を覗きこみます。
「…一人で逃げてたの?」
その言葉で、デッキーは顔を真っ赤にしてしまいました。
「うるせえ!俺みたいな非力な一般人をてめぇ等みたいなのに巻き込むな!」
デッキーは戦いの間、岩影に隠れていたのでした。
「ま、戦いに参加出来ないならそれは別に仕方ないし、ね?」
カービィがそう言ったと同時に、先ほどの幻獣が一匹、デッキーに飛びかかりました。
どうやら、一匹だけ生き残っていて、皆も見落としていたようです。
おもわず皆が叫び声をあげました。
「デッキー!危ないっ!!!」
それを見てデッキーはとっさに、一瞬で呪文を唱えました。
「…∞§Φζ√!!!!」
すると、デッキーの体から、灼熱の炎が踊り出ました。
ライオンは熱気に包まれ一瞬にして、跡形も無くなってしまいました。
それを見たデデデ大王が半分驚き半分呆れてデッキーに、
「で、誰が非力な一般人だって?」
と呟きました。他の皆は、デッキーの強さにビックリしていました。
「め、滅多な事が無い限り、魔法は使わねぇ!体力に限界がある。」
と少々慌ててデッキーが言いました。
「つまり、緊急時専門ってことだね?」
とカービィは興味津々と尋ね、デッキーはうなずきました。
「ああ、『緊急時』にな…ζ§√∞∬λζ…!!!!」
デッキーの体から、紺青に鈍く輝く炎が飛びでて、カービィに襲いかかりました。
「うわぁぁっ!!!!!」
「カービィ!!!」
間一髪、メタナイトがカービィを抱き抱え、横に飛び、凄まじい炎を避けました。
「チッ…しくじったか。」
デッキーは苦々しく言い放ちました。
なんとか助かったカービィは、唖然としてデッキーを見ました。
「何するんだよデッキー!!」
「悪いなカービィ。もうおめぇには死んでもらうぜ…ッ!」
デッキーはものすごい殺気を込めて言いました。
カービィはその言葉に驚いて、改めてデッキーを見つめました。
「何言ってるの?デッキー!ねぇ!」
辛く響くカービィの声で、皆は黙りこんでしまいました。
デッキーは冷たく瞳でカービィを一瞥し、その沈黙を破りました。
「死ぬ運命に背くなよ?」
―――悪いな。後は頼んだぜ―――
続く