幸せの条件
第6話〜裏切りの定義


「ま、そもそも幻獣で始末が済むと思ったのが…甘かったな。」

デッキーの真紅の瞳が暗く鈍く光ります。

「俺は…カービィ。おめぇを殺す。今は無き我が主、ナイトメアの命でな。」

カービィは驚きのあまり声を上げました。

「そ、そんなのウソでしょ?デッキー!!!」

「残念だが…真実だ。」

デッキーはカービィを射抜くかのように鋭い目をしました。

「おめぇ等をここにおびき出し、殺す。これが俺の本来の目的。ナイトメアはカービィ、

おめぇにやられる瞬間ポップスターに呪いをかけた。だが、不完全だったんだ。」

その言葉にマルクが首を傾げます。

「呪いが…不完全なのサ??」

デッキー微かにその瞳に肯定の色を見せました。

「そう。だから今頃になって発動したって訳だ。」

ふと、レッカが悲痛な声で皆に尋ねました。

「なぁ、呪いって、かけた人やないと解かれへんねんよな…!!!」

そう。呪いはそれをかけた者以外は特殊な方法以外解く事ができません。

そしてこの呪いをかけた人物、ナイトメアはもうこの世にはいません。

「この星は、俺の仲間は、カービィのせいで滅びた。今の姿は仮の姿…

今は俺様の魔法で保たれている。ここは本当は…もう廃星なんだ。」

「なっ!!僕が…この星を…滅ぼしただって?」

衝撃を受けているカービィを無視し、デッキーは話しだしました。

主、ナイトメア・ウィザードは、消え去る刹那、呪いをポップスターにかけた事。

しかし、彼は力が残っていなかったので、発動するのに今までという時間がかかった事。

そして呪いは、本人以外は特殊なてだてを使わぬ限り、解けない事。

だが、滅びる運命のポップスターには、仲間を殺したカービィがいる。

このまま星と運命を共にさせてはつまらない。仲間のフリをして裏切ってやろう。

そう思って、ここに呪いをかけた奴がいるとウソを付いて連れてきた事。

頃合を見計らい、先ほどの幻獣で、皆に死んでもらうはずだった事。

それが失敗した今、自分の手でカービィだけでも殺すつもりだという事。

そう。これはデッキーが呪いを利用した、仲間を弔うための裏切り劇だったのです。

カービィ達は呆然としていました。ポップスターが助かる確立はほぼゼロでしょう。

けれどカービィは、ポップスターの事より、デッキーに裏切られ事に激しく胸を痛めました。

そして彼女が、自分への復讐の為に苦痛な思いをしている事に。

「ワリィ。俺の役目は、おめぇを殺し、ポップスターを滅ぼす事だ。死ねカービィ!!」

と叫ぶと、デッキーは静かに魔法を唱え始めました。

周りが凄い熱気に包まれ、カービィ達は動く事も出来ません。

「アカン!!動かれへん!このままやったら…カービィがっ!!!」

リプリーが焦りながら悲痛な声を漏らします。

でもカービィはその声が何処か遠くで聞こえたようでした。そしてゆっくり口を開きました。

「…良いよ殺しても。それで君の気が晴れるなら。」

デッキーはその言葉でカービィの方を刹那に一瞥しました。

「デッキー、僕は君が誰でも何者でも良かった。たとえ敵でも。」

デッキーは呪文を唱えつづけます。かなりのレベルの魔法のようです。

「だって少しの時間だったけど、僕等は仲間で、そして友達だったはずだ!」

デッキーの周りに、大きな炎の刃が現れました。

「だからどんな理由があっても、君は…」

カービィの目から一粒、涙がこぼれ落ちました。

「君はその信頼を裏切っちゃいけなかったんだ…ッ!!!」

デッキーはピタリと呪文を唱えるのを終えました。

「言いたいのは、それだけか。」

―――あばよカービィ。


続く