幸せの条件
第7話〜涙色の流星


強がりでも良い。馬鹿にされても笑われたって構わない。

ただ意味の有る生き方がしたかった。価値の有る死に方がしたかったんだ。


「デッキー…な…んで…なんで…ッ!!!!!!!」

なんと、魔法の刃で貫かれたのは、カービィではなくデッキー本人でした。

放った魔法はレベルが高く成功率が低い上、

デッキーは最後の瞬間集中を解いてしまったので魔法が暴発し、自分に当たったのです。

「クソ…魔法は、集中して撃たなきゃ…暴発して本人に当たっちまう…か。」

声を絞りだすデッキーの体から大量の血が流れます。もう、助からないでしょう…

しかし、あまりの事に誰も動く事が出来ません。

「失敗するとは…情けねぇ。なぁ、俺の仲間が死んだ理由を知ってるか?」

どこか必死のデッキーの言葉に、ためらいがちにメタナイトが肯きます。

「……………………カービィが原因だと言っていたな?」

デッキーは静かに、ゆっくりと肯きました。

「俺様さ、実は闇炎族なんだ。あ、別名は流星族ってんだ。」

闇炎族。炎と願いを司る幻の種族。数千年前滅んだ種族。

滅んだ理由は、元々数が少ないという事と、この種族は不思議な力を持ち、

とても珍しい文明を築いていたので、狙われやすかったのです。

デッキーやデッキーの仲間は、その最後の生き残りだったのです。

デッキーがカービィを見つめながら話を続けます。

「…カービィがナイトメア・ウィザードと戦ったあの日、

外れた弾が仲間の一人にブチあたって死んだ…」

「……………………ッ!」

カービィは唇をかみしめました。聞きたくなかった事実が静かに語られます。

「俺らは死の瞬間巨大な流れ星を引き寄せる呪いがかかってる。

だから、周りを巻き込み押しつぶされて死んでしまう。」

しばらくし、デデデ大王がはっとした顔でデッキーを見上げました。

「なら、巻き込まれて死んだ奴がまた星を呼び寄せて…延々と死んでいく…」

「そういう事だ。…ホレ。お前等もさっさと行きな。」

デッキーは当たり前とでも言うように躊躇もせず言葉を続けます。

「俺はもうすぐ死んじまう。星にぶっ潰されておめぇ等も道連れになるぜ?」

デッキーにはもう敵意が有りません。ただ、その目は寂しそうに見えました。

「ま、それはそれで目的果たせてOKだけどな。」

「でも…でも…っ!!」

カービィはデッキーをすがるように見つめました。デッキーがギラリと睨みます。

「失せな。俺は単純馬鹿なんかと心中する気はねーよ」

「…行くぞ。ここで我々が死んだらもっと多くの犠牲が出る…ッ!」

カービィを静するメタナイトの冷静な言葉は本当につらそうに聞こえました。

カービィは涙を流しながらも、行く決心をしました。

「…デッキー…僕等は…友達だよね…」

―本当は裏切りたくなかったんだよね?本当は友達だよね―

――ば〜か。俺様は裏切り者だ。俺はおめぇ等と居る資格がねぇんだよ――

「さあな。これ持っていきな。おめぇに貸しといてやる。いざという時に開けな。」

デッキーは、首にかけている袋をカービィに手渡しました。

「…これから僕等はどうすれば…ねぇ?」

カービィは頬に流れる涙も拭わずデッキーを見つめました。

呪いをとく方法が無い以上、もうどうしようもありません。

ここに居る意味も、理由も、何もかも無くなってしまったのです。

デッキーは聞き取れないほど微かな、かすれた声で答えました。

「…俺の村に行け。そこに答えが有る。道なら、リプリーが知ってる。」

「あッ…!!!!行くで!!!まだ…ワイ等が居る限り呪いをとく方法は残っとるんや!!!」

何かに気付いたらしいリプリーの言葉に

カービィ達は何も言わず肯き、その場を立ち去りました。

そう、まだなすべき事が残ってる。立ち止まってられない。

方法がある限り、希望がある限り、皆の為に進まなければならないから。

後には、血まみれのデッキーが残りました。デッキーは、一人呟きました。

「ま、なんだかんだ言ってさ…」

キラリと、空に流れ星が流れました。

「結局計算通りなんだよな。」

流れ星が、少しづつデッキーに近づいてきます。

「なぁ?願い事千個ぐらい叶えてくれそうなお星さんよ?」

デッキーは微かに微笑み、静かに目を閉じました。

―――やっと笑ったじゃん―――

流れ星が大きな火の粉をまきちらし、今まさにデッキーに当たろうとしています。

「流れ星で最後に見た幻影は仲間でも親友でもなく…

たった数日一緒にいたあいつ等だなんて…俺もばかみてぇ。」

……無情にも流れ星はデッキーを押しつぶしました。


――なんであの時魔法を失敗したかって?

おめぇがあんまりにも必死だったから、単純だから、馬鹿らしかったんだよ。

オイオイ、なんで泣くんだよ。俺様は裏切り者だぜ?

俺みたいな奴に泣いてどうする。おめぇが泣いてるなんて似合わねぇよ。

俺の事なんか忘れてとっとと先に行っちまえば〜か。――

カービィ達は遠くからその光景を見ることができました。

そして、振りかえらずにまた歩き出しました。

大きな絶望と微かな希望を抱いて。


続く


〜管理人の感想〜
デッキー、昇天。
『俺みたいな奴に泣いてどうする』が悲しかった。
デッキー・・・いい奴でしたね。
さあ、これからカービィにどんな運命が待っているのか!?