ケルハーン戦記 〜英雄の伝説〜
第1章 第1話


〜惑星『ケルハーン』 西大陸 ホロビタ砂漠〜


ここはホロビタ砂漠・・・。

『ケルハーン』 の中でも特に巨大な砂漠である。

現在、この砂漠は プププ共和国軍 第12部隊 と、

イファルナ帝国軍 第14部隊 との戦場と化している。

その砂漠の中心部を、3人の人影が 列になりながら歩いている。


彼らの服や帽子には 『プププ共和国軍』 と書かれている。

「ねえ、のどが渇いたよ〜…」

へとへとになりながら最後尾を歩くのはカービィ。

「うるせえよ!無駄口たたく暇あったら、さっさと歩け!!」

鋭い目つきをしながらカービィに怒鳴りつけるのはバーニンレオ。

「…お前ら、少し静かにしてくれ…」

そう言いながら最前列を歩くのはナックルジョー。

この3人は 軍に1週間前入隊したばかりの新米兵で、

プププ共和国軍 第12部隊への物資補給係に任命され、

その 第12部隊 に物資を運ぶところだった。

いや、運んでいたという方が正しいだろう。

「くそ、あそこであんな事さえなければな…」

バーニンレオが言った。

すると他の二人が脱力した。

「そんな事言うなよ…」




…3時間前、彼らは大型トレ−ラーに乗りながら砂漠を走っていた。

トレーラーは順調に 第12部隊の 前線基地へと走っていた。

「この調子で行けば、後30分時間くらいで基地に着くはずだ。」

操縦席でトレーラーを運転していたバーニンレオが言う。

「基地に着いたら、腹一杯 食べ物を基地の人に食べさせてもらおっと!」

トレーラーの後席に座っていたカービィが言う。

「お前が腹一杯食ったら、基地中の食料が無くなっちまうよ!」

助手席に座っていたナックルジョーが笑いながら言った。

「ははは!違いねえっ!!」

続いてバーニンレオも笑い出した。

笑う二人を見て、カービィは顔をふくらました。

「もう!失礼だよ!!」

カービィが怒りながら言った。

「ごめんごめん、ジョークだよ!」

カンカンに怒っているカービィを見て、ナックルジョーが言った。

そう、この時は全員幸せだった。

この時は…。




…事件は突然起きた。

トレーラーが急に砂漠の真ん中で止まったのである。

「おい、どうしたんだ?」

ナックルジョーがバーニンレオに尋ねた。

「わからねえ……どうやらエンストしたみたいだ。」

バーニンレオはそう言うと身軽に外に飛び出し

トラックのエンジンを調べに行った。

レオがトレーラーのボンネットを開けると、中から黒い煙が立ちこめた。

「ゲホゲホ…なんだ、こりゃ!?」

エンジンは黒い煙を延々と出していた。

元々、このトレーラーはかなり古い物で、どうやらガタが来ていたようだった。

「あちゃー、こりゃ駄目だな…。」

レオはそう一人呟くと ボンネットを閉め、助手席にいるジョーと後席のカービィにこう言った。

「この車、もう使い物にならねえ。こうなったら歩いて物資持っていこう。」

それを聞いたカービィは後席の窓から顔を出した。

「えー!歩くのぉ!?ボク、やだよぉ!!」

カービィの顔には、不満の表情が浮かんでいた。

「ごちゃごちゃ抜かすな!早く出てこい!!」

バーニンレオがカービィに怒鳴りつけた。

そう言われたカービィは、しぶしぶ車を降りてきた。

「とりあえず、基地は武器やその弾薬等が不足しているらしいからな。

 食料よりも武器を優先して持っていこう。」

レオがそう言うと、レオとジョーは積み荷を降ろし始めた。

しかしカービィはボンネットの方を見に行っていた。

「もしかしたら、直せるかも…」

カービィはそう言うと、ボンネットを開く。

中には黒い煙が充満していた。

「ケホッケホ…」

カービィは軽くせき込んだ。

そして 再びボンネットの中を見る。

「うーん、暗くて良く見えないや…」

カービィはそう言うと、車からライターを持ってきた。

ライターの火を付けて、中を見る。

その様子を見たジョーはカービィに声をかけた。

「おーいカービィ、何してんだ。」

驚いたカービィは手を滑らせ、あろう事か、ライターをボンネットに落とした。

「やばいっ!!」

カービィは急いでボンネットから離れ、そして二人に大声で叫ぶ。

「二人とも危ない!!逃げてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

その声に驚いた二人は 急いでトレーラーから全速力で離れる。

そして…

トレーラーは轟音と共に大爆発を起こした。

爆風に吹き飛ばされる3人。




ようやく風が止むと、レオはカービィを睨む。

「…お前、何していた…!!」

その恐ろしい形相は、鬼をもはるかに超えていた。

さらに、彼らを襲った悲劇はこれだけじゃ無かった。



その爆風に気づいたイファルナ帝国軍第14部隊が、カービィたちの方に接近してきたのである。

命からがら、無事にその場から逃げ出したカービィたちだったが、

その体力はもはや限界を超えていた。


「ハア、ハア…とにかく第12部隊と合流しねえと…」

レオがそう言うと、3人は第12部隊の前線基地目指して出発するのであった。




…・そして現在に至る。

「あそこでカービィが馬鹿な事さえしなければ…」

レオがカービィを責める。

カービィは反省した表情を見せる。

「…もうやめようぜ、こんな話。」

ジョーがこの空気を変えようと割り込んできた。

「それよりまだなのか、基地は…」

「この辺のはずなんだか…」

その時だった。

カービィが、突然その場に倒れた。

驚いた二人がカービィに近寄る。

「だ…大丈夫か!?カービィ!!」

ジョーが話しかける。

「な…なんか、めまいが…」

「う、うわ!ひどい熱だ!!」

ジョーがカービィを背負う。

「ご…ごめん、ジョー。迷惑かけちゃって…」

「そんな事気にすんなよ!!」

ジョーは心配そうにカービィを見る。

「おい、レオ!!まだ見えねえのか!!!」

ジョーがレオに怒鳴る。

その間にもカービィはどんどん衰弱していく。

「分かってるよ!!俺だって必死に探してる!!」

その時、レオの目に建物が映った。

「あ…あれだ!!あれが 第12部隊前線基地だ!!」

レオが建物に指を指す。

「本当か!!」

「ああ、間違いねぇ!!」

ジョーは猛ダッシュで基地に向かう。

「カービィ、後ちょっとの辛抱だ!頑張れよ!!」




続く